総まとめ「ケーブルラック」の施工方法
ケーブルラックとは
簡単にいうとケーブルを配線するための支持材になります。
大量の配線を行うときにケーブル1本1本に電線管を施工するのは大変なのでケーブルラックを利用する事で施工性が簡略化されます。
梯子を横にした様な形状なのでケーブルをのせていくだけで簡単に配線をする事ができます。
注意点はケーブルを保護する目的ではなく、ケーブルを配線する時の支持を目的としています。その為電線での施工はできません。ケーブル配線工事の扱いになります。
使用できる場所
屋内・屋外、隠蔽部・露出部とわずどこにでも設置する事が可能です。
屋外では材質やカバーなどの選定が必要になってきますが、大量のケーブルを配線する時には大活躍するでしょう。
ケーブルラックの選定ポイント
1.材質及び表面処理を選ぶ
施工の環境条件により材質を使い分ける必要があります。電気設備工事管理指針に記載されているケーブルラックの仕上げ及び施設適合場所を参照します。
- 一般屋内とは、湿気・水気の多い屋内以外の事務所・電気室・機械室をいう。
- 湿気・水気の多い屋内とは水蒸気の充満する屋内、常時水が露出又は結露する屋内、常時湿気のある屋内及び水滴の飛散するおそれのある屋内をいう。
- 一般屋外とは、海岸地帯の屋外及び腐食性ガスの発生する屋外等特殊な屋外以外をいう。
- ZTは、二重天井内及び意匠上考慮する場合に使用する。
基本屋内はZMを使用するので悩まないと思いますが、屋外ではZ35(ドブ漬け)とZA(ネグロス商品名:スーパーダイマ)、ステンレスで悩むかと思います。
設計図では、まだZ35と記載されている時が多いと思いますが設計事務所や監督員と話し合いZAに変更する様にしましょう。
費用と施工のしやすさを考慮するとZA一択でしょう!
※Z35(ドブ漬け)を切断・穴あけなどの加工を行った個所はローバル等で処理しましょう。
2.種類タイプを選ぶ
基本的に強度的な事から種類を決定します。ケーブルラックの強度は、ラックの支持間隔、親桁、子桁の形状、材質などにより決定されます。
一般的には
SR(親桁70mm)は弱電幹線・電源線の二次側
QR(親桁100mm)は電源線の幹線に使用します。
また、人が乗る恐れのある場所はQRを選定しましょう。
鋼製では支持ピッチ2.0m以下とされているので青文字は参考値になります。
(1.0mあたりの静荷重となります)
ラック種類 | 支持ピッチ 1.0m | 1.5m | 2.0m | 2.5m | 3.0m |
SR20 | 609(kgf) | 269(kgf) | 111(kgf) | 55(kgf) | 31(kgf) |
S-SR20 | 410 | 180 | 80 | 40 | 22 |
SR40 | 428 | 268 | 111 | 55 | 30 |
SR80 | 240 | 240 | 153 | 53 | 28 |
QR20 | 1635 | 723 | 404 | 217 | 124 |
S-QR20 | 1085 | 479 | 268 | 155 | 88 |
QR40 | 821 | 722 | 403 | 216 | 123 |
QR80 | 383 | 384 | 383 | 214 | 121 |
表よりステンレス製の場合は少し静荷重が少なくなります。その他の鋼製は殆ど違いはありません。
また、ラック幅が狭い方が許容静荷重が大きいくなります。幅が広がるにつれて子桁の許容荷重を超えてくるためです。
VVF2.0-3Cのmあたりの重さは0.160kg/mの為、SR20を2.0mで支持した場合は111(kgf)÷0.160(kg)=693本まで配線可能です。
CVT60sqのmあたりの重さは1.9kg/mの為、SR20を2.0mで支持した場合は111(kgf)÷1.9(kg)=58本まで配線可能です。
許容静荷重を超える時ってあるのかな?
CVQ325は12.5kg/mの為、QR80を2.0mで支持した場合は30本まで可能なのでラック本体にかかる許容静荷重はあまり気にしなくても大丈夫かもしれません。
しかし、ラック1本あたりにかかっている荷重は12.5kg/m×3m×30本=1.1tとなり、とんでもない重さになります。ラックの許容静荷重以外に検討が必要になりますね!!
kgとkgfの違い
kgは質量を表します。例えば地球で60kg、月でも60kgです。
kgfは重量を表します。月の重力は地球の1/6なので地球では60kgfでも月だと10kgfになります。
ここは地球なのでカタログに載っているkgfはイコールkgで考えます。
3.幅を選ぶ
特に決まりはありませんが、幅を選定する時は、一般的にケーブルの本数・ケーブルの仕上り外径・ケーブルの質量・ケーブルの許容曲げ半径「増設工事にたいする予備スペース」を考慮して決定します。
また、ラック幅を広げると許容静荷重が少なくなるのでケーブル重量と鑑みて検討しましょう。
ラック幅:W
W=dn+「40mm(両端の余裕)」+予備スペース
d:ケーブルの仕上がり外径+3~10mm
n:ケーブル本数
電気設備工事管理指針の場合はw=1.2(本数×(ケーブル外径+10mm)+60mm)
ケーブルラックの支持・配線の支持
ケーブルラック又はこれを支持する金物は、スラブ等の「構造体」に吊りボルト、ボルト等で取り付ける。
支持間隔
水平支持間隔は、鋼製では2m以下、その他材質では1.5m以下とする。直線部と直線部以外との接続部では接続部に近い位置で支持します。
伸縮継ぎ金具部では金具中心より両側300mm以下に支持する事を推奨しています。
垂直支持間隔は、3以下とする。ただし配線室等(EPS)の部分は6m以下の範囲で各階支持とする事ができる。
支持材
壁面用のブラケット及び上部からの吊りボルトにより支持する方法があります。
ケーブルラックを支持する吊りボルトは、ケーブルラックの幅が呼び600mm以下の物では呼び径9mm以上、ラック幅が呼び600mmを超えるものではボルト呼び径12mm以上とする。
振れ止め金具には ダクター用、Lアングル用や外側支持・内側支持など色々なタイプがありますので支持材にあったものを選定しましょう。
接続部(継ぎ手部)用の振れ止め金具の準備を忘れない様にしましょう。
屋上や屋外に設置する場合はデーワンブロックをしようしましょう。
屋上に使用する場合は防水処理を傷つけないようにゴムマット付きを選定しましょう。
ケーブルラックの配線
水平部では3m以下、垂直部では1.5m以下の間隔ごとに固定する。
電力ケーブルはの積み重ねを行っていい場合は
- 単心ケーブルの俵積み
- 分電盤2次側のケーブル
- 積み重ねるケーブルの許容電流について必要な補正を行い、配線の太さに影響が出ない場合
ケーブルラックの接地
ケーブルラックは、原則として使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事・300Vを超える場合はC種接地工事が必要になります。
内線規程により「接地線から金属管の最終端に至る間の電気抵抗は、2Ωいかに保事が望ましい。」とあります。ケーブルラックの電気抵抗もこれと同等との解釈で施工します。
ネグロス電工の技術資料によりますと、ノンボンド継ぎ金具で施工した場合に電気抵抗が2Ωなる為にはSRタイプ約500本(1500m)QRタイプ約714本(2142m)とありますので、基本的には接地線を1箇所とれば十分だと思います。
エキスパンなどで縁を切る場合やノンボンドタイプ以外を使用するときは施工のしやすさを検討して数か所に別けて接地線を接続するのもいいでしょう。
接地工事に使う部材
直線継ぎ金具、上下自在継ぎ金具、水平継ぎ金具と基本的な材料にはノンボンドタイプが準備されています。
気持ちノンボンドタイプの方が割高(数十円程度)ですがアースボンド線の渡り配線をする事を考えればノンボンドタイプで施工する方がいいでしょう。
継ぎ金具
ネグロス電工のカタログではノンボンドタイプの記載があります。
見た目は変わらないのにノンボンドとそうでない物にはノンボンド表示シールが付属されています。
忘れずに張りましょう!
マルチ型のノンボンドタイプにはステンレスとドブ漬けの商品がありませんので注意して下さい。
同じような商品でもノンボンドではない商品もありますので注意しましょう。
カタログにノンボンドタイプの記載がありません。
上記の金具や伸縮継ぎ金具や口径違い金具などノンボンドタイプの無い物を使用した場所ではアースボンド線を使用して接地工事を行います。
アースボンド線
ノンボンドタイプ以外の継ぎ金具を使用した時にケーブルラック間を電気的に接続する為にはアースボンド線を使用します。
民間ではケーブルラックに直接ビスを打ち込み電気的に接続を行います。
官庁物件等では下穴を開けた個所にボルト・ナット類で接続するタイプがあります。
カバーの接地金具
カバー用の接地工事にはアースボンド線とカバークランプ用金具で接地をとる2パターンがあります。
カバーすべてアースボンド線を渡る必要があるので枚数が多い時は施工が大変かと思います。
カバークランプと併用してカバーをケーブルラックを電気的に接続する金具になります。カバー1枚に対して1箇所取付ます。
セパレータの接地金具
セパレーター間を電気的に接続する為のアース金具になります。
※ケーブルラックと1箇所はアースボンド線を使用して接続する必要があります。
接地線の太さ
ボンド線の太さ
配線用遮断器の定格電流[A] | ボンド線の太さ |
100以下 | 2.0mm 以上 |
225以下 | 5.5mm2以上 |
600以下 | 14mm2 以上 |
ケーブルラックのカバー
美観アップの為に底板としてカバーをする場合や、屋外にケーブルラックを敷設する時はケブル保護としてカバーをかけましょう。
カバーの種類
カバーには平蓋タイプ、屋根型タイプの2種類があります。
屋根型タイプの方が肉厚で頑丈になっています、積雪地域などに使用すると良いでしょう。
また、人が乗る場所には屋根型ノンスリップタイプを使いましょう。
カバークランプ
ケーブルラックのカバー(1500mm)に対してカバークランプを4個以上取り付ける事とメーカー技術資料には記載されています。
注意としてカバーの継ぎ目に取付る物は数量に含みません。
風圧荷重計算(例)
1.設置条件
- ケーブルラック本体:QR100(ラック幅=1m)
- ラックカバー :CV100
- カバークランプ :CVCQ100
- 設置場所 :建物屋上
2.設置条件
- 地域 :東京都23区内(基準風速:Vo=34m/s)
- 地表面粗度区分 :Ⅲ(ガスト影響係数Gf=2.3)
- 地上高さ :H=25m
- 風力係数 :Cf=1.0(角度θ=10°以下)
3.カバークランプの強度
カバークランプ1箇所の許容静荷重:P=700N
4.計算
速度圧:q=0.6×{1.7×(H/Zg)a}×Gf×Vo2
=0.6×{1.7x(25/450)0.2}2×2.3×342=1451N/m2
カバー1枚に対してカバークランプを4箇所取付た場合において、その内の1箇所が受ける最大受風面積A1は
(カバー端100mm入った個所にカバークランプを取り付けての均等割り)
A1=1m×0.434m=0.434m2
A1において、カバークランプ1箇所に加わる風圧荷重P1は
P1=q×Cf×A1=1451×1.0×0.434=630N
カバークランプ1箇所の許容静荷重:P=700N>P1=630N
以上の計算結果より、カバー1枚に対しカバークランプ4箇所以上する事で、風圧荷重を満足します。
地域やその周辺状況により、基準風速など設定条件がことなります。「海岸部などの強風地域」では、カバークランプの数量を4箇所より増やさなければならない場合があります。
屋根型タイプのカバーには規定数の穴が空いていますのでその数分のカバー取付金具を使用しましょう。
耐震設計
耐震クラスA・B
ラック敷設場所 | 耐震支持間隔 | 耐震種別 |
上層階、 屋上、 塔屋 | 8m以内に1箇所 | A種またはB種 |
中層階 | 8m以内に1箇所 | A種またはB種 |
地下、 1階 | 12m以内に1箇所 | A種またはB種 |
耐震クラスS
ラック敷設場所 | 耐震支持間隔 | 耐震種別 |
上層階、 屋上、 塔屋 | 6m以内に1箇所 | SA種 |
中層階 | 8m以内に1箇所 | A種 |
地下、 1階 | 8m以内に1箇所 | A種 |
また、耐震支持間隔とは別に分岐部分や末端から2m以内に耐震支持を設ける事が耐震上有効になってきます。
耐震支持の適用を除外する場合
- ラック幅400mm未満
- ボルト等の吊り長さが平均200mm以下
- ラックの許容応力が十分にあり、製造者により支持間隔を広げても支障が無いと確認された場合(最大12mの緩和)
A種は耐震支持材の間の配管重量の0.6倍、SA種耐震支持材部材は1.0倍として支持部材の選定を行う。
B種耐震支持は、自重支持吊り材と同程度以上の斜材により支持すること。
参考書籍まとめ
各参考書をまとめたものを下記に記述します。
また、同じような内容や製品自体に対する要求、または曖昧な表現は割愛している項目もあります。
※ 例 堅固に固定する、ケーブルはもつれない様にする、等
さいごに
長くなりましたが少しは参考になったでしょうか?
みなさんが資料を調べる時間を短縮する事が出来れば幸いです。
ご意見・ご感想はコメントよりお願いします。
バイバイまたねー✋
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